貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~


 刺客は兵たちが引っ立てていき、フェルナンは医務室に運ばれた。

 上機嫌でアローナを抱いて、いそいと部屋に連れて戻る。

 部屋の扉を閉めながら、ジンが言ってきた。

「お前は刺客に私が狙われていることを知り、必死に守ろうとしてくれたのだな」

 えーと。
 まあ、言われてみれば、そんな感じなんですけどね……と思うアローナを寝台に下ろすと、ジンも横に腰かけた。

「ありがとう……、

 ああ、名前がないと不便だな。
 そろそろ、なにかつけようか」

 いやいや。
 ありますから、名前。

 雇ってもらえなかったシャナが拗ねて消えてしまったので、結局、なにも通訳してもらえなかったのだ。

 私の名前はですね、とアローナは唇を指差し、言ってみる。

 いや、声が出たところで、ジンが通訳なしにアッサンドラの言葉を理解できるかはわからないのだが。

 だが、ジンはアローナの手首をつかむと、その美しい黒い瞳を近づけ、言ってきた。
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