貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~
「なんだ。
 キスをしろと言っているのか。

 さすがは娼館の女だな。
 純情そうに見えて積極的だ」

 ちっ、違いますーっ、とアローナが口をぱくぱくさせて訴えたとき、
「王よっ。
 アローナ姫の従者たち一行が、今度こそ城に着きましたぞっ」
と医務室から戻ってきたフェルナンが扉が跳ね開けた。

 邪魔されたジンが振り返り、またか、という顔をする。

 アローナはその後ろで、ジンに手首をつかまれ、また、口をぱくぱくさせていた。

 だから、私がアローナなんですっ。

 アローナッ。

 アッサンドラのアローナなんですーっ。

 私が娼婦なわけないじゃないですかっ。
 もう~、マヌケな王様ですねーっ!

 そのとき、アローナの手首を押さえつけるジンの手が緩んだ。
 
 ジンはフェルナンの方を向いたまま、溜息をつき、言ってくる。

「早く玄関ホールに行ってこい」

 は?
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