貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~
「必死にお前を探していたのだろう。
 此処にいると言って安心させてやれ、

  ……アローナ」

 振り向いたジンが、ちょっと困った顔をして、その名を呼ぶ。

 あれっ?

「あの~、声、出てますけど、アローナ姫……」
とジンよりも更に困った顔をして、扉のところに立つフェルナンが言う。

「え、えーと。
 それはあの、どの辺から……?」

 焦っておのれが言ったセリフを思い返しながらアローナは訊いてみた。

 ジンが渋い顔をして言わなかったので、フェルナンが代わりに言ってきた。

「『アッサンドラのアローナなんですーっ』からですかね……?」

 ……そのあと、もう一回出なくなってて欲しかったですね、はい、と思いながら、アローナは苦笑いしてごまかそうとした。




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