天才か、狂人か。 ~変 態 化学教師、野球部の監督にさせられる~
「人生の先輩として・・・
教師の先輩として、
僕にアドバイスをお願いします。
僕は【チームの勝利】を優先させれば良いですか?
それとも【部活動の思い出】を優先させるべきですか?」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
“マッドサイエンティスト”が初めて・・
“人間らしい一面”を・・
そんな表情を見せてきた気がした。
きっと・・阿部先生は今・・
言葉に表せられないほど、
苦しい気持ちを抱えている。
言葉に表せられないほどの、
心情と戦っている・・。
だからこそ・・彼は私を呼び出して・・
“相談”したかったのか・・・。
「阿部先生。」
「・・・・・・・・・。」
「我が学園サッカー部を指導していた時も、これと似たような経験をした事があります。」
「・・・・・・・。」
「いや・・別に私じゃなくても・・。
“指導者”として・・“監督”として・・
選手を預かる立場の人間なら、
これは、誰しもが経験せざるを得ない、
辛い【葛藤と決断】です。」
「・・・・・・・・・。」
「ですが阿部先生。時として、我々は心を鬼にしなければならない。
私のサッカー人生のノウハウから言っても、あなたは【チームの勝利】を優先すべきです。」
「・・・・・・・・・。」
「ですが・・これだけ・・
私からのお願いです。
酷なのは分かっていますが・・
最後は【本人の意思】、【本人の決断】も尊重してあげてほしい。
こちらの考えを説明して、
それでも尚・・
彼が“No”と言ったら、
あなたは折れて頂けますか・・?」
「・・・・・分かりました。
教頭のアドバイスに従いましょう。」
第9話 完