天才か、狂人か。 ~変 態 化学教師、野球部の監督にさせられる~
打球が当たった右足に氷を当てながら・・
さっき貼った湿布がぐっしょりと汗で取れかけていたので新しいのと張り替えながら・・
みんなと会話する憲伸くんの口から、
ずっと苦しそうな“ハァハァ”という息遣いが聞こえてくる・・。
「・・憲伸君。僕は野球素人ですが、
君の膝がどれほどのダメージを負ったのかぐらい見当はつきます。」
「本人が“大丈夫”って言ってるんだから大丈夫スよ・・?」
「上半身の力だけでヒットが打てるほど、“打撃”というのは簡単なものなんですか?」
「・・・・・・・・・・・。」
「“ベンチメンバーに責めを負わせたくない”という君の気持ちは理解できますが、
手負いの君よりはヒットを打つ確率が高い。
・・・・・・中村君、龍君。
違いますか?」
「「・・・・・・・・。」」
「・・・変態監督さん・・
・・行かせてくれ・・・・。」
「・・・ダメです。
君はベンチに下がってください。」
「・・・いかねぇんだよ・・
・・負けるわけにはいかねぇんだよ・・。」
「君は十分、仕事を果たしました。
打たれはしましたが、
それは相手が一枚上手だっただけで、
9回表の投球は・・トラウマに打ち勝った、
見事な君らしい投球でした。」
「・・・・・・・・・・・。」
「だから下がっ・・・・。」
「・・・スッ・・・・・嫌だ・・。」