天才か、狂人か。     ~変 態 化学教師、野球部の監督にさせられる~


「・・・初めまして立浪君。
野球部 顧問の阿部です。」


「・・・・・・・・・・・・・。」


「初対面で無茶ぶりをしてすみませんが、ここで憲伸君をベンチに下げる事によって、

10回表・・延長戦に入った場合に投げられるピッチャーがいません。」


「・・・・・・・・・・・・・。」


「現在の得点は5-7。
状況は2アウト満塁。

次打者が今日タイミングの合っていない8番 山口君という事を考慮すると・・。」


「・・・・・・・・・・・・。」


「君が勝負を決めてきてください。」


「・・・・・・・・・はい・・!」




ヘルメットを被って・・
一度も素振りをしないで・・

・・・ゆっくりと・・・
左バッターボックスへ向かう後ろ姿・・。


「立浪ーーー!!!頼むぞーー!!!」


元気が戻った大西くんの檄・・。
吹奏楽の音が再開した一塁側スタンド・・。



「・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・?」


ゆっくりと向かっていた後ろ姿が・・
立ち止まって、こっちに振り返って・・


「・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・・・。」


・・・私と・・・目が合う・・・。







“筒井らしい自己満足のエゴの塊だな”


“独り言だから気にしないで。
・・・・・じゃあね”








闘志を宿す視線と、
滲んだ視線がぶつかる・・。


お尻のポケットに手を入れて・・
【それ】を取り出した後・・


握った拳を突きだして、
ウンと頷いてくれて・・

ポケットに入れ直して、
バッターボックスへと歩みを再開した。







{お待たせ致しました。

青愛学園 選手の交代をお知らせ致します。


7番 憲伸君に代わりまして、
バッター 立浪君。

バッターは立浪君。}





第13話 完














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