天才か、狂人か。 ~変 態 化学教師、野球部の監督にさせられる~
第14話
第14話
過去からの涙、受け取る時
野球部マネージャー 筒井ミク
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《ボール ツー!》
「よっしゃー!ナイスセン!!!」
カウント・・2ボール 1ストライク・・
「・・・・・・・・・・・・・・。」
ここまで、まだ一振りもしていない左バッターボックス。
「あいつ・・ホントに1年もブランクあんのかってぐらい落ち着いてるな!」
大西くんが、両手を握って見つめる他のベンチメンバーを鼓舞する。
最後の気力を振り絞っているのは決してウチらだけじゃない。
マウンド上の相手ピッチャー川崎君も、
ここにきてもまだ衰え知らずの快速球とフォークボールを投げてくる。
でも・・・見極められてる・・!
“気晴らし”じゃなくて、
“練習”としてバッティングセンターに通い続けていたんだと確信できる・・!
「やっぱり・・立浪の構えは、
全然変わらないな・・。」
右足に氷を当てながら、憲伸くんが呟く。
入部以来、みんなが試行錯誤しながら“自分のスイング”を探求する中、
左バッターボックスで構えるバッティングフォームは1度も変わる事がなかった。
それは・・“既に完成されている”という何よりの証拠。
龍ちゃんや福留くんと比べると少し小柄だけど、まさに“体全体”を使って球を捉える。
だから・・1年生の時からずっと4番を任されてきた・・!