天才か、狂人か。 ~変 態 化学教師、野球部の監督にさせられる~
2番 荒木くんもショートフライに倒れて、
龍ちゃんが打席に向かう。
立浪くんはネクストバッターズサークルへ移動したので、ここで会話が途切れた。
「・・・・・・・・・・・・・。」
阿部先生の方を見ると・・
今のウチらの会話が聞こえていたのか、
ニチャァ笑みを浮かべながら目が合って、
悲鳴を上げたくなる・・・・。
「さすが立浪君と言った所でしょうね。」
「当たりですか・・・?」
「“たまたま”でしょうが、
前の打席に[空振り三振]を取った1番 福留君、2番 荒木君が【バットに当ててきた】
三振だろうが何だろうが、アウトに打ち取ったのだから喜べばいいのに、
彼の心中は少なからず穏やかではないでしょう。」
「おんどりゃああ!!!」
「「「「ナイバッチ龍!!」」」」
「“たまたま”でしょうが、
3番打者にこの日【初安打】を打たれた。
ヒットの1本や2本、打たれて当たり前だから気にしなくてもいいのに、
彼の心中は少なからず穏やかではないでしょう。」
「上原君の混乱を招くのが狙いで・・
それを全部計算して・・・?」
「もっと言うと【ベンチに戻った後】の彼の混乱を招くつもりです。」
「どういう事ですか?」
「恐らくあれほどの投手なので、
こんな小細工を仕掛けても、
簡単に崩れる事はないでしょう。
マウンド上では落ち着いた投球を見せるはずです。」
「・・・・・・・・・・。」
「ですが、3アウトチェンジになって、
ベンチへ戻った後はゆっくり出来るので、
一連の青愛学園が見せた動きについて、疑心暗鬼になって考えてしまうでしょうね。
僕達は、前日の晩ご飯の話をしていただけですが。」
“ピッチング自体には影響は出ない”
と予想した阿部先生に対して、
“じゃあ意味ないじゃん!”
と言いかけたけど・・・
立浪くんは惜しくもフェンス手前まで運んだライトフライに倒れたので、
話を終わらせて・・・ベンチに戻ってきた龍ちゃんと立浪くんにグローブを渡した。