天才か、狂人か。     ~変 態 化学教師、野球部の監督にさせられる~


「阿部先生・・・・。

理事長はご納得の様子ですが、
私は納得致しかねます。

もう少し理由を教えてください。」


「・・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・。」


「“僕には時間が無い”
先ほど述べた理由が全てです。」


「・・・・・・・・・・・。」


「あなた達と約束していた、
“途中敗退”した場合だけでなく、

優勝した場合でも・・
最初から決めていた事です。」


「・・・・・・・・・・・・・・。」


「ここはご納得頂きたい。」



マッドサイエンティストが初めて私に向ける・・強固な・・真っ直ぐな視線・・。


一体・・この男は何を考えて・・?


「部員の皆には・・・
何とお話するんですか?」


「もう彼らに僕は必要ありません。」


「・・・・・・・・・・・。」


「彼らの“夢”の先に、
僕はもう居なくていい。

“変態”が居なくても、
彼らは甲子園で十分に戦えます。」


「・・・・・・・・・。」



「・・【君たちは強い】・・・・
その一言だけ伝えておいてください。」


「何も・・言わないつもりですか・・?」


「・・・・・・・・・・・・。」


「あの子達に何も言わず・・
黙って去るつもりですか!?」


「引っ越しの準備は既に終えています。

明日の13時、
名古屋発の“のぞみ”で東京へ行く。

研究所時代の仲間達が待っています。」


「阿部先・・・!」



「見送りは不要です。では失礼します。」






第20話 完














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