守りたかった能登原守と飛びおりた妹
【1.旅立ち】


妹が飛び降りた。

能登原守(のとはらまもる)という名前でありながら俺は妹の柚奈(ゆな)を守ることができなかった。
 
どうして妹は飛び降りたのか?

疑問が俺を責めたて、後悔と無力感が何度も押し寄せた。そういう感情を持ったまま生きている自分を鈍麻させ、その後の人生をやり過ごしてきた。

この先もきっとわからないままなんだろう。妹に直接聞くことは叶わない。俺の人生はその時から止まったままだった。

「死にたい」という気持ちってなんなんだろう、という問いは永遠に解けないのか?
そもそも解く解かないの話なのか?
それでも、俺の中での執着の火は消えずにずっと残っていた。

わからないなら聞けばいい。調べればいい。
どうやら死にたいと思って生きている人はたくさんいるらしい。彼ら彼女らは個別の、唯一無二の死にたい気持ちを抱えたまま日々生きているのだと知れた。

こうして俺は再び動き出した。
世界にあふれる「死にたい気持ち」に出会うために。







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