35cmの音
玲音は何も言わず

「待って、痛いって!」

私の手を握り

「ねぇ!玲音ってば」

早足で駅へ向かう。

「玲音!!!」

履き慣れない下駄に

「待ってよ玲音!!!!」

足がズキズキする。

「... 何?」

そう言って駅の階段で

ようやくこっちを向く

「なんで怒るの?」

玲音の気持ちが分からない。

「は?自分で分かんだろ」

分かんないよ!

「なんで玲音が怒るの?」

そんな風に怒るなんて、

「怒るに決まってんだろ」

期待してしまう。

「誰かとキスしちゃ駄目なの?」

私の事、

「当たり前だろ!」

好きなのかなって

「なんで?」

両想いなのかなって

「お前は好きでもねー男とできんだな」



期待してしまう。
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