35cmの音
玲音と電話しながら

「ってよ玲音!」

帰り道をゆっくり歩く僕。

「ありがとう弟よ。」

夜はいいな。堂々と歩けるから

「どういたしましてー」

最近あのお店で会ったり、
電話したりラインしたり、

“普通の兄弟”みたいに玲音と笑い合っている。

「写真はなんかテキトーに。頼む」

でもまだ、家には帰れない玲音。

「了解!帰ってくればいいのに」

まだ帰れない理由が、葛藤が、

「...んー。そのうちな!」

玲音の中には、あるんだろうな。

「てかサナちゃんに、ちゃんと
渡したんだから大人しくしてなよ!」

アメリカに戻るとか行ってたけども。

「はいはい」

「花火大会の人混み利用して遠くから
お店眺めるとかほんとキモいからね?」

「なんでバレた?!」

あ、やっぱ戻る気ナシだったな。笑

「双子ですから」

「でも帰り道、心配じゃん?」

隠れて後ろから見守る気?!
もうそれ完全にストーカー


「ねぇ、もうヤメテ。僕が恥ずかしい」



確かにその日は人も沢山いるだろうから
心配なのは分かるけどさ...

「だよなぁ。マキさんとも約束したしな。うーん...」

信じるってやつね。

「じゃあ、時間合えば僕がバイト先に
迎えに行って家まで送るから!」

ストーカーになる前に何とかせねば

「部屋には入んなよ?」

「さっき入ったけど?玲音の部屋」

皆いたけどねー

「テメェ。俺と咲那の思い出の場所に
気安くズケズケと上がりこみやがって!」

「はは。なんなら抱きしめられたよ?」

「は。いつ?」

「初めて会った日...と、浴衣渡した時。」

「あんのヤロー。やっぱ駄目だわ無防備過ぎる」

「心配しないんじゃなかった?」

「だから、俺はその日は行かない!」

どうせ行くってば

「はいはい。分かりましたー」

「はぁー。でも拐われたら...」

また言ってる

「僕がついてますから!!」

渋々、頷く玲音。笑

「...じゃーな!写真よろしく」

「はーい」
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