35cmの音
静まり返った空間に冷たい風が流れ込む

「ありがとうございましたぁー!」

扉が開き観覧車のスタッフの声や
ザワザワした園内の音が響いた。

「...サナちゃん?」

私は舞音くんの手を握って外へ引っ張った。

「勘違いしないで!守ってもらわなくていい、
支えてもらう程弱くもない。そんなのいらない」

私は良い人なんかじゃない



さっき、

舞音くんと見たあの景色すらも、





玲音に見せたいと思った。




「私はね、誰にでも優しいし
誰にでも笑いかけるし、良い奴なの!」

偽善者で最低で最悪で

「へ?!急にどうし...」

悪い奴で、不器用で、
相手の気持ちにすら気付けない...

「だから!誰にでも優しいし、
誰のこともほっとけないの!」

だから、

「....知ってるよ。」

言わないで。

「これは、特別なんかじゃないから!」




舞音くんだけは




好きだなんて言わないで。
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