35cmの音
春が訪れる頃、

LEOさんは前を向くような
胸が踊るような曲を作ってた。

その頃、あの人は毎日楽しそうに
“春っていいですよね!”と、
スキップしながら歩いていた。

その姿を見てメロディーが浮かんだ。

だから私は、
明るくワクワクするような曲を作った。


夏が始まる頃、

LEOさんをテレビで見かけなかった。
あの人も毎年、夏は日本にいなかった。

私は花火を見上げ、切ない気持ちを抱き
ここで一人孤独に唄った。

だけど大人びた姿でここに、テレビに
戻ってきた2人の目は輝いていた。

だから私も早く大人になりたくて
背伸びした大人な曲を作った。


夏が終わる頃、

LEOさんが切なく辛い曲を出した時、
“夏の終わりは少しだけ切ないんです”
その頃の、あの人も辛そうだった。

私は誰しもそれぞれに
苦しい思いがあるんだと
その気持ちに寄り添うように、
切ないラブソングを作った。

街が冬に染まる頃、

テレビのLEOさんはいつも不機嫌で
だけど、それもどこか幸せそうで

“寒いけど今日は温かいですね”

って、あの人が笑ってたから

冬に似合わないラブソングを作った。






...そうだった。

同じだった。


LEOさんも、

“あの人”も


いつも同じ想いだった。
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