あの日の恋は、なかったことにして
【1】職場というのは、狩場である。
 8時半、出社。
 フレックスタイム制だから、出勤時間はみんなバラバラ。

 本当は私も、満員電車なんかに乗らず、優雅に午後出勤なんかをキメたい。

 だけど私が配属になったのは、総務課。
 しかも、サポート部門とかいう、よくわからない部署。
 仕事内容は、会議の資料作りやお茶くみなんかをする、雑務がメインである。

 外語大を優秀な成績で卒業した私が!
 せっかく外資系コンサル会社で語学力を活かせると思ったのに!
 なんでこんな雑用ばかりをしなきゃならないの!


 周りを見る。
 ビルのフロア一面がパーテーションでいくつかのブースに区切られていて、会社全体が見渡せる。

 この会社の社員は100人くらいだが、フレックスタイム制で遅くに出社する人も多いため、この時間にオフィスにいる人間はせいぜい4割程度だ。
 男女比は半々。

 入社した日に確認したけれど、OB訪問の時に私に悪さをしようとした人はいなかった。
 聞くところによると、あれから間もなくどこかの系列会社に飛ばされたらしい。
 もちろん、一緒にOB訪問した友達は不採用。
 ザマアミロ。

 でも、本当の勝ち組になれるかは、これからの私の頑張り次第だ。
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