あの日の恋は、なかったことにして
【5】価値観の違いは、簡単には埋まらないものである。
社長室を出ると、神妙な顔をした猪狩くんが立っていた。
「すず……」
無視して通り過ぎようとした私の腕を、猪狩くんが掴んだ。
「離して!」
「頼む、話を聞いて!」
私は無理やり彼の腕を振り払った。
そして、精一杯の虚栄を張って、彼の顔を正面から見据えた。
泣かない。絶対に。
「聞かなくてもわかってる。あなたは自分の仕事をしただけでしょ?」
「ごめん」
「いいよ、私が馬鹿だっただけ」
「すず……」
猪狩くんの方が泣きそうな顔をしている。
罪悪感でいっぱいの顔をすれば、許してもらえるとでも思ってる?
でも、もう絶対に騙されない。
「すず……」
無視して通り過ぎようとした私の腕を、猪狩くんが掴んだ。
「離して!」
「頼む、話を聞いて!」
私は無理やり彼の腕を振り払った。
そして、精一杯の虚栄を張って、彼の顔を正面から見据えた。
泣かない。絶対に。
「聞かなくてもわかってる。あなたは自分の仕事をしただけでしょ?」
「ごめん」
「いいよ、私が馬鹿だっただけ」
「すず……」
猪狩くんの方が泣きそうな顔をしている。
罪悪感でいっぱいの顔をすれば、許してもらえるとでも思ってる?
でも、もう絶対に騙されない。