あの日の恋は、なかったことにして
 終業と同時に席を立つ。

「お疲れさまでした〜」

 皆さん、まだまだ残業するみたいで、これまた背中に刺さる視線が痛いけれど、気にしないでオフィスを出る。


 オフィスビルの2階のトイレで化粧を直し(1階はお客様が使うから、一応遠慮している)、携帯用のホットカーラーで髪を巻く。

「合コン用の服を用意しなきゃな~」

 食事代は向こうのおごりだとしても、気分よくお金を出してもらうには、こっちだってそれなりの対価を用意しなくてはならない。

 それは、かわいらしさ。
 そして若さだ。

 でも、見下されるのはNG。
 ちょっとだけ高嶺の花を手に入れる高揚感。それを相手に感じさせるために、こっちも武装する必要がある。

「うーん、給料日までまだ日があるんだよね……」

 仕方がない。あの方法で、お小遣い稼ぎをするか。
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