お願い、あと少しだけ
横浜デートの始まり
土曜日の朝9時、弘樹は奈緒子に電話した。

「悪い、準備中だった?あの、さ。今日、奈緒子の家に泊まって・・・よかったんだよな?」

どきんっ!奈緒子の胸が高鳴った。奈緒子と弘樹は今日、ひとつになるのかな。

「うん。・・・荷物、結構ある?」

「パジャマとか下着とか、明日の着替えとか・・・なんだかんだで、な。奈緒子のアパートまで行っていい?9時45分でいいかな」

「大丈夫よ。気を付けてきてね」

奈緒子の準備はほぼ、終わっていた。普段から、あんまりがちゃがちゃした部屋ではないが、それでも少しくらいは片づけるところが目についたので、整理にとりかかった。どっちにしろ、家を出る前に整理整頓、するつもりだった。

9時45分、弘樹が奈緒子の部屋を訪れた。

「女の子らしい部屋だね」

落ち着いた桜色の家具やカーテンを目にして弘樹は目を細めた。本当に、奈緒子らしい部屋だ。

「ありがとう。寝室は奥だから、荷物置いてきてあげる」

ちょっと照れているのを隠しながら、奈緒子は言った。

「サンキュ。準備は出来てる?」

「うん」

「じゃ、行こっか」

桜新町の駅について、弘樹が、

「自由が丘駅経由でも行けるみたいだから、そっちにしよう。渋谷は人が多いから」

はぐれる可能性がないとは言えない、と思い、言った。

「私、自由が丘、大好き。今度、自由が丘にパンケーキ食べに行こうよ」

「そうだな。明日、スカイツリーとどっちがいい?」

奈緒子はちょっと考えて、

「今日、帰ってくる時間によって決めましょう?スカイツリーは人が多いから、疲れていたらつらいかも」

「そうだな、そうしよう」

2人は、二子玉川と自由が丘を経由して、みなとみらい線の元町・中華街駅に着いた。

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