お願い、あと少しだけ
チャイナ服のスタジオ
チャイナ服を着させてもらえるスタジオは、結構、こじんまりしていた。

「予約していた紺野(こんの)ですが」

受付の女性が愛想よく

「承っています。女性もののチャイナドレス、Mサイズ、ピンクですね」

「えっ?弘樹は着ないの?」

奈緒子の天然ぶりに驚いた。チャイナドレスと言ったら、女性だろ。

「男性物のチャイナ服って、あるのかな?」

すると、受付の女性が

「チャイナ服と言うか・・・太極拳の服ならありますけども。Mサイズでよろしいですよね?色は紺色のみとなりますが、ご用意できます。レンタルのみでしたら、女性ものと同じく1時間1500円ですが、どうなさいますか?」

「着ようよ、弘樹!滅多に着れないよ?一緒に写真写ろう!!」

「そうだな・・・お願いします」

「では、女性の方は、こちらへ。男性の方は、あちらのだんせいスタッフがご案内します」

「あとでね」

「ああ」

それぞれ、スタッフとともに戻ってくるまで10分かからなかった。

「可愛い・・・キレイだ、奈緒子」

ちょっと照れつつ、体勢を立て直して奈緒子も言った。

「弘樹もかっこいいよ。映画スターみたい」

「こんな映画スターなんていないよ・・・背だって低いし」

照れ隠しもあってか、弘樹がそんな風に言うと

「もっと自信もって!弘樹はかっこいいし、背だって私より高いし、栄転までするエリートなんだから。そんな弘樹の彼女に慣れて、私、幸せだよ」」

「・・・ありがとう。奈緒子もきれいだし可愛いし、仕事もできるよね」

「仕事はどうかなぁ?」

「てきぱきしてる、って噂だよ」

「えっ、開発部にまで噂行ってるの?」

「総務はいろんなところと付き合いあるからね。うちの部のやつも結構行ってるし」

「そっかぁ・・・気を引き締めて、頑張りますっ!」

しゅたっ、と敬礼の格好をした奈緒子を愛しく想う弘樹だった。

「そうだっ、写真撮らなきゃ!1時間しかないんだもん!」

「だな」

自撮り棒を使って、ツーショットの写真を一心に撮った2人だった。
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