お願い、あと少しだけ
うわっ、これはちょっと恥ずかしい
写真スタジオを出て、ひと息。

「これからどうする?タピオカミルクティー、飲む?」

「まだお腹いっぱぁぁぁい」

おどけるように言う奈緒子。タピオカミルクティーなら、横浜駅周辺でも飲めるか。

「あのね、弘樹」

「ん?どした?」

「シーフードレストランの予約、何時?」

「18時だけど・・・ちょっときつい?」

「うん。そのくらいに横浜に着く予定なら、横浜でタピオカドリンク飲んで・・・うちで、パスタでも作るよ」

「え?いいの?奈緒子の手料理?」

「・・・って程のものでもないけどね。シーフードミックス、使うし」

「パスタより、・・・奈緒子のほう、先に食べちゃうかもだけど」

「っっぅ・・・」

奈緒子がゆでだこ状態になった。もう、こんなにすぐ赤くなるの恥ずかしいなぁ。

その様子を見て、弘樹は本当にそうなっちゃうかもな、とこっそり思ったのだった。

「じゃあ、とりあえず、予約キャンセルするから、ちょっと待ってて」

弘樹がレストランに電話をかける。弘樹は、いつもなんでこんなに余裕なのだろう。女性と付き合った経験がやっぱり多いのかな。私は、弘樹が2人目なのに。しかも、大学時代。そんなことを考えていたら、哀しくなってきて、涙が出た。

「えっ、えっ、えっ、奈緒子どしたっ!?」

「・・・なんでもないの」

「何でもないわけ、ないだろ?そんなに泣いて。僕、なんか悪いことした?」

「そんなんじゃないの・・・」

「じゃあ?・・・これから、2人、離れ離れになるんだから、しこりはないようにしようよ」

そうだね。こんな思いで東京と大阪に離れるのは嫌だ。

「んーと。弘樹、モテるんだろうな、って。最初の年だったかな。亜由を振ったでしょう?」

「モテる、とかじゃないよ。その時の彼女と、結構長くてね。6年かな、付き合ってたの。でも、会社離れてしばらくして、彼女に好きな男が出来て別れて。それから、誰ともつきあってないよ」」

「亜由と付き合おうと思わなかったの?」

「ん~。スポ根系の女の子は好みじゃなくてね。僕の好みは、奈緒子だよ」

と言うと、ぎゅっと抱きしめてキスをした。中華街のど真ん中で。奈緒子は身体を離してから、

「ちょっと・・・恥ずかしいかも」

「あはは、だな」

周りの人からヒューヒューひやかされていた

「とりあえず、コスモワールドまで歩こうか?大丈夫?ちょっとあるよ」

「歩くのは大好きだから。でも、ユックリ行こうね?」

弘樹は右手を差し出し、奈緒子は左手で優しくつつんで、歩きだした。


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