お願い、あと少しだけ
忘れられない夜にしような
「景色、綺麗だったね」

奈緒子が笑顔で言う。とりあえず、今を楽しもう、弘樹の言うように。

「そうだな。夕陽に染まった街とか、見られたしな。じゃあ、みなとみらい駅まで歩いて、横浜でタピオカドリンク、飲もっか」

「うん」

お腹のほうは、大分落ち着いてきていた。でも、夕食はまだ入らないな、と
奈緒子は思った。やっぱり夕食はうちで・・・ひ、弘樹は私が先かもって言ったっけ。奈緒子は、思わず赤くなっていた。

「ん?何を赤くなってんの?」

「な、なんでもないよ。夕陽のせいで赤く見えるんじゃないの?・・・夕食は家で食べようね?」

弘樹が奈緒子の耳元で

「何、今晩の甘い時間とか想像してんの?」

とそっとささやいた。

「なっ、なっ、なっ・・・」

うろたえる奈緒子。

「いいんだよ。忘れられない夜にしような」

弘樹が奈緒子の肩を抱いて優しく言った。

奈緒子は顔の紅潮もそのままに、小さく頷いた。
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