お願い、あと少しだけ
奈緒子の宣言
「自由が丘に行く前に、ちょっと公園寄って行かない?」

3月の風はまだ肌に冷たいが、もう少しだけ、2人っきりの時間を過ごしたい気もするな、と弘樹は思った。

「いいよ。もう準備、出来た?」

「うん」

奈緒子のアパートから少し歩いたところに小さな公園があった。あと1月足らずで桜も満開になることだろう。

「あのね」

奈緒子がふいに言った。

「私、弘樹の連絡の数とかで、愛を測ったりしないことにした」

しっかりとした口調で宣言する奈緒子。

「弘樹の仕事が忙しいのは分かってることでしょ?ひたすら弘樹の連絡を待っているだけの女になりたくないの。時間があるときは、友達とショッピングに行ったり、幸せいっぱいの恋愛映画を観たりして、自分の時間をエンジョイするの」

奈緒子はいつの間にこんな強い()になったのだろう。思わず、弘樹は奈緒子を抱きしめた。

「そのかわりっ!」

弘樹の腕の中で奈緒子は言う。

「2人でいるときは、思いっきり私を甘やかしてね。私だけを見つめていてね」

「当たり前だろ。離れているときも、連絡できなくても奈緒子を想ってるよ。2人でいるときは・・・昨日からみたく・・・・」

2人して、赤くなってしまった。そして、2人は自然にキスしていた。

「ふふっ、おいしいものもいっぱい食べようね!いろんなとこ、行こうねっ!」

「あぁ、もちろん!でも、一番のごちそうは奈緒子だから」

「もうもうもうっっ!!」

ぽこぽこぽこぽこ・・・奈緒子は弘樹の胸を叩きまくった。

「ははははっ!やっぱ、奈緒子、可愛い!」

「もうっ!」

弘樹・・・私、少しはいい女になれたかな。

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