お願い、あと少しだけ
新宿へ
Sweet Soulを出て、弘樹が言った。

「まだ、3時には少し早いけど、新宿行こう。奈緒子、服でも見る?」

「うん」

渋谷で乗り換えて、新宿へ。日曜日の山手線はそれなりに混んでいる。ドア際で弘樹はさりげなく奈緒子を守るような姿勢で、立っていた。

「なんか照れるね」

「えっ?」

「壁ドンされてるみたい」

「あははっ。確かに」

ほどなく、新宿に着いた。

「えっと・・・オー・ド・シエルは東口だっけ?」

と奈緒子。何年か前に、忘年会で使ったレストランバーだ。

「あぁ。東口から歩いてすぐ。東口で服見る?」

「うん・・・なんだかんだで、あと40分だから」

「じゃあ・・・お供します、お姫さま」

弘樹が冗談っぽくうやうやしく言った。

「お姫さま、って柄じゃないけどね」

と奈緒子が謙遜すると弘樹は

「奈緒子は僕の永遠のお姫さまだよ」

赤くなりながら、奈緒子がすかさず、

「お妃さまにはなれないの?」

と拗ねたふりをして言った。

「・・・っっっ。それは、近いうちにっ!」

今度は弘樹が赤くなる番だった。

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