お願い、あと少しだけ
奈緒子、大阪秘書課転属?
翌日、奈緒子が出勤するとすぐに佐川部長に呼ばれた。

「岡崎くん・・・大阪の総務部だが、しばらく人は必要ないそうだ」

「そうですか。仕方ないですね」

奈緒子は唇を噛んだ。涙が出てきそうになるのを、必死で抑える。

そんな様子を見て部長が、ゆっくりと付け加えた。

「そこでだ。岡崎くん、君は秘書課に転属する気はないか?もちろん大阪の、だ」

にゃっと策略者っぽく笑う部長。

「したいですっっ!秘書経験はありませんが、秘書検定2級は総務部に入ってすぐ、取得しました」

「実は、来月半ばに一人、秘書が退職することになってね。岡崎くんの話をしたら、お願いしたいって言ってるんでね。秘書経験がないということで、急だが明日大阪に行って顔合わせをして、問題なければ再来週から向こうの秘書課で研修もかねてということになる」

奈緒子にとっては、最高の話だ。・・・もちろん、顔あわせでNGってこともありえるわけだが。

「承知しました。明日は、大阪直行直帰でよろしいでしょうか」

「構わないよ。うまく行くことを祈ってる」

佐川部長が両親指を立てて、応援してくれた。がんばらなくっちゃ。

早く弘樹に伝えたい・・・そう思いながらランチの時間を心待ちにしていた。



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