お願い、あと少しだけ
奈緒子のアパート
レストランデートを終えて、新宿の街に出た。

「奈緒子、家どこだっけ?送るよ」

「田園都市線の桜新町で一人暮らし」

「そうなんだ。僕は吉祥寺だよ」

弘樹に大分遠回りをさせてしまう、と奈緒子は思った。

「一人で帰れるよ」

「無理しない!彼女を守るのも彼氏のつとめです。それに、渋谷から井の頭線出てるから、それほど苦でもないよ」

「ありがとう。・・・弘樹って、こんなに優しかったんだ」

「っっっ」

今度は弘樹が赤面する番だった。

電車を乗り継ぎ、桜新町へ。閑静な住宅街の中に奈緒子の住むアパートはあった。閑静な住宅街と言えば聞こえはいいが、結構暗いな、と弘樹は心配になった。

「送ってくれてありがとう」

「あの、さ。あの・・・」

「?」

不思議顔の奈緒子。少しは察してくれよ、と弘樹は思いつつ・・・。

「・・・おやすみのキス、してもいいかな?」

「・・・っっっ!!!」

おもいっきり赤面する奈緒子。恋人になって、何時間?でも、弘樹が好き。

「私も、してほしい」

「そんな、可愛いこと言うとぉ~」

奈緒子の顔に弘樹の顔が近づいてくる。そして、永遠とも思える間、熱い、熱いキスをした。

「ふぅ」

奈緒子が息をつくと、弘樹はくすっ、と笑って、

「じゃあ、おやすみ。部屋に入るまで見てるよ」

「うん。おやすみなさい」

奈緒子はドアを閉めつつ、手を振り続け、ドアが閉まってから弘樹は駅に向かって歩き始めた。
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