お願い、あと少しだけ
横浜デート・イヴ
横浜デート前日の夜9時、弘樹は奈緒子に電話した。

「奈緒子?今、何してた?」

「明日の服、選んでた。2人の思い出アルバムに載る服だもん、迷っちゃうよ」

奈緒子、可愛い。弘樹は思った。でも、これは言わなきゃ。

「明日は、結構歩き回ると思うから、歩きやすい靴でな。ヒールとか駄目だぞ」

「分かってる。だから迷ってるのよ。ウォーキングシューズにも似合う、でも可愛いデート服って」

「奈緒子は何着てても可愛いよ」

ボッ!と赤くなる奈緒子。弘樹のこの手の台詞には未だに慣れない。

「弘樹はどんな格好で行くの?」

「シャツにチノパンかなぁ。だから、奈緒子もそんなに気取らなくていいよ」

う~ん、となると、ペール・ラベンダー色のプルオーバーに、ふわっとしたギャザーたっぷりめのキュロット、くらいかなぁ。さっきのアクセも合わせられそうだし。

「それから、明日、11時に桜新町、って言ったけど、10時に変更でいい?」

『いいけど…1時間くらいで中華街着くよ?」

「中華街の前に、山下公園を散歩しよう。写真いっぱい撮ろうな。コーヒーをテイクアウトしてゆっくり散歩もいい」

「そだね」

「それから中華街でご飯食べて・・・30分くらいかかるけど、寄り道しながらゆっくりと、コスモワールドに。大観覧車、乗ろう」

「素敵」

「ディナーは、電車で横浜まで行って、歩いてすぐの高層ビルにあるシーフードレストランを予約したよ。好きだろ、シーフード?」

「弘樹・・・忙しかったのに、いろいろ調べてくれたり、予約してくれてありがとう。・・・大好き」

「・・・」

照れていたのか、しばらく弘樹からの返事がなかった。
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