ちよ先輩のてのひらの上。
ちよ先輩のとなり。
ミッション大失敗
——カチ、カチ。
部屋に響く時計の音を、ベッドに腰掛けて聞いていた。
——カチ、カチ、カチ。
新品のスクールバッグを抱いたまま、針の動きと、じっと睨めっこをする。
下の階から、トタトタ、と誰かが廊下を駆ける音と、……それに続いて、玄関のドアを開閉したような音が聞こえた。
私は、窓からそっと外を見下ろした。
門から出ていく制服姿が、坂の向こうへと遠ざかっていくのを確認する。
——よしっ……。
心の中で、小さくガッツポーズを決めた。
もうすぐで、7時30分……。30分になってからバス停まで全力ダッシュをすれば、まだ何とか間に合うはずだ。
——カチ、カチ、カチ……。
「ちょっと、ひなたー?何してるの?遅刻するわよ」
階段の下から、お母さんの大声が呼びかけてきた。
「はーいっ」
同じように大きな返事をして、私は、ぴょんっ、とベッドから腰を下ろした。
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