ちよ先輩のてのひらの上。
「……ひなちゃん」
先輩の掠れた声に胸が詰まって、悲しくもないのに、また涙が出そうになる。
「……せんぱい……」
ぼんやりとする頭で発した私の声は、頼りないものだった。
ちよ先輩の表情が、一瞬、苦しそうに歪んだように見えた。
——けれど、すぐにぎゅっとに抱きしめられ、先輩の顔は見えなくなってしまう。
「……そらには、内緒だよ」
いたずらっぽく言った声が、私の耳元をくすぐった。
先輩の腕の中で、私はしっかりと頷く。
「俺たちだけの、秘密ね」
その言葉に応えるように、……私は先輩の背中に手を回し、……ブレザーの裾を、きゅっと握った。