ちよ先輩のてのひらの上。
ひみつごと
夕日に柔らかく包まれた生徒会室。
いたずらにカーテンを弄ぶ生温かい風。
私を包み込んだ優しい温もり。
雲のように巻き起こる、ふわふわとした胸の内の感覚。
……唇に触れた、湿りを帯びた熱。
ふとしたときに蘇ってくるそれらに、思考が奪われて……、私は本日何度目かの、ため息をついた。
「結城さん。どこ行くの」
「えっ」
「……化学室、そこだよ」
紺野くんの声に、はっとして振り返る。
私の足は、いつの間にか化学室の前を通り過ぎていた。
「……ご、ごめんっ。ぼーっとしてた」
恥ずかしくなりながら慌てて引き返す。
いけない、いけない。
そういえば、係の仕事で、さっき回収したばかりのクラスみんなのノートを、運んでいるところだったんだ。
よいしょ、とノートを抱え直し、ドアへと手を伸ばした。
けれど、私のその手が届く前に、紺野くんがドアを開けてくれた。