ちよ先輩のてのひらの上。
「ありがとう」
隣を見上げると、紺野くんは不思議そうに首を傾げた。
「……もしかして具合悪い?」
「あ……、ううんっ。大丈夫。……ちょっと考え事してただけだから」
「そう」
「ごめんね。ありがとう」
心配をかけてしまったことを申し訳なく思いながら、化学室へと踏み入れる。
教卓の上に、持ってきたノートを、紺野くんが持ってきた分に重ねて置いた。
「考え事って、……何か悩みとか?」
「……えっと」
私は目を泳がせた。
まさか、頭の中にあるちよ先輩とのことを話すわけにはいかなくて。
曖昧に言葉を濁していると、
「……嫌な思いとか、してない?」
「……え……?」