ちよ先輩のてのひらの上。
***
「……3回目」
ボソリ、と言った真白ちゃんの声が耳に入ってきて、私は窓の外から視線を引き剥がした。
「……んと。なんて?」
「3回だよ。ひなたちゃんが、この30分間でため息ついた回数」
真白ちゃんの言葉に、私は思わず壁の時計を見た。
いつの間にか、生徒会の会議が終わるのを待って、もう30分も経っている。
真白ちゃんが心配そうに眉を寄せた。
「今日、ずっと上の空なんだもん。何かあった?」
「な、何もないよ」
私は小さな声で言った。
……本当は真白ちゃんに、ちよ先輩との間にあったことや、……この、息苦しい不安にも似た感覚について、相談に乗ってもらいたい。
……だけど……。
『俺たちだけの、秘密ね』
耳をくすぐる先輩の声に、私は言葉を飲み込んだ。