ちよ先輩のてのひらの上。


……言えない。

あれはちよ先輩と私の、……ふたりだけの秘密だから。


「ひなたちゃん……もしかして、熱でもあるんじゃない?」

「だ、だいじょうぶ。元気だよ」

「でも……ほら。顔赤いもん」

「……気のせいじゃないかな……」

「あ、ちょっと。……隠さないのっ」


私は髪の毛に顔を埋めるようにして、俯いた。

真白ちゃんが覗き込んでくる。

私はさらに体を捻って、なんとか顔を隠そうとした。

真白ちゃんも、負けじとそれについてくる。

何度かその攻防を繰り返し、ふたりしてクネクネと変な動きをしていると、


「真白ちゃん、お待たせ」


廊下のほうから、お兄ちゃんの声が聞こえてきた。

ガタガタッ、と椅子が大きな音を立てる。

真白ちゃんが慌てて立ち上がった音だ。

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