ちよ先輩のてのひらの上。


……なんだ……。ふたりきりじゃ、ないんだ……。

がっかりとしてしまって、すぐにいやいや、と思い直す。


……私ってば、なにを期待してたんだろう。

ちよ先輩と、この教室でふたりきりになって……。この間の出来事の、続きがあるのかもしれない、とか……。

そんなことを思うだなんて。

……もしかして、こういうの、よっきゅうふまんって言うんじゃ……。


「……ひなたちゃん?」


いつまでも入り口に突っ立っている私を、安川先輩が訝しげに振り返った。

はっとして、慌てて中へと入る。

私は視線を落としながら、机の上へ荷物を下ろした。

すぐ近くで作業をしているちよ先輩に、意識が集中する。


「そういえば、ひなたちゃん。横田ってやつ覚えてる?」


安川先輩の声に、私は顔を上げた。


「……えっと。前に、安川先輩と一緒に教室に来てた人ですよね」

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