ちよ先輩のてのひらの上。


「あと、……さっきの顔も、よくないね」


……顔……?

半ば反射的に両手で頬を包むと、ちよ先輩がくす、と笑った。


「……自覚ないんだ」

「あの、……ヘンな顔、してましたか……?」

「ううん。違うよ」


先輩は再び腰を曲げて、私と目線を合わせる。

すぐ後ろの壁に添えられたちよ先輩の手に、まるでその場に縫いとめらるように、行く手を塞がれてしまった。


「真っ赤になっちゃってさ……、すごく、可愛い顔」

「……っ」

「あ。言っておくけど、これはからかってるわけじゃないからね。……思ってること、言ってるだけ」


先輩の口から放たれる言葉が、私の心臓をぎゅうう、と締め付ける。

胸が詰まって、呼吸が難しい。それなのに、不快感は一切なくて……。


「……ああ、ほら。その顔」

「せ、せんぱ」

「男とふたりきりのときに、そんな顔したら、……ダメだってば」


囁くような声とともに、そっと頬に触れられた。

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