ちよ先輩のてのひらの上。
「……こうやって、触ってもいいのかなって勘違いしちゃうよ」
自分が尋常じゃないほどに熱を帯びているのか、さっきは熱く感じたはずの先輩の手を、冷たく感じる。
「それとも、……触って、欲しいの?」
「……」
先ほど、胸の内でしわしわと萎んだはずの期待が、再び膨らみ始めた。
それが、胸いっぱいに広がって——。
私は息苦しさから、助けを求めるように先輩を見つめる。
そして、……小さく頷いた。
先輩の、レンズごしの綺麗な瞳が、微かに揺れた気がした。
熱っぽい吐息が、静かに吐き出される。
「……わかった」
ちよ先輩と私の間にあった距離が、徐々になくなっていった。
先輩の息遣いが、唇に触れて——。
「ひなちゃん。……これ、とって」
甘えたように言われ、……ぎこちない動きで、私は先輩から眼鏡を奪った。