ちよ先輩のてのひらの上。
「……ごめん、大丈夫?」
先輩は、肩で息をする私を、優しく抱きしめた。
……あ……。先輩の、匂い……。
「……ごめんね。……少し調子に乗っちゃった」
ぎゅう、と強すぎるくらいに、力が込められた。
控えめに落とされた声に、……私は目を閉じる。
すがるように、先輩の制服を握った。
……ちよ先輩……。
先輩は、私がお願いしなくても……少しでも、私に触れたいって思ってくれましたか?
『色々手遅れになる前に……離れたほうがいいと思う』
そんなの、……無理だよ。
きっと、すでに手遅れなんだ。
私の心は、もうとっくに先輩に捕らわれていて……、離れることなんて、できない。