ちよ先輩のてのひらの上。
「もう、焦りしかないよ……。また、いつ彼女できたって報告されるか、ずっとビクビクしてんの。ほんと疲れる」
「駆け引きとかなしで、ハッキリ言っちゃえばいいじゃん」
「簡単に言わないでよ。……気まずくなるのも嫌なんだもん。今、ひなたちゃんとすごい仲良いし。フラれる可能性、大」
「あー、結城くんの妹か。……でも、付き合ってないって言ってるんでしょ?」
「……うん」
「きっと、友達の妹だから優しくしてあげてるだけだって。いいなあ……。私も結城くんにお兄ちゃんになってもらいたいし、千代崎くんに気にかけられたーい」
「……ちょっと。私の応援してくれてるんじゃないの?」
「あはは。莉子が千代崎くんとうまくいったら、結城くんも誘って4人で遊びに行きたいなあ」
「やっ、ひどい。結局それが目当てでしょ」
「持つべきものは友達って言うじゃん」
「サイテー」
楽しそうな笑い声と、足音がだんだんと近づいてくる。
私は、お弁当が入った袋をぎゅっと胸に抱いた。
トイレからふたりの女子生徒が出てきて……、私と、バチッと目が合う。