ちよ先輩のてのひらの上。
***
ガラリ、という扉の音で目を覚ました。
……いつの間にか、寝ちゃってた……。先生、戻ってきたのかな。
ボケッとした頭で考え、目を開けた。
ぼやけた視界に白いカーテンが映る。それがゆらりと揺れ、人影が見えた。
「……ひなちゃん?」
聞こえた声に驚いて、何度も瞬いた。
視界が鮮明になっていき、慌てて起き上がる。
ボサボサであろう髪を整えながら、
「ち、ちよ先輩?」
カーテン越しに呼びかけた。
人影が近づいて、白い布がゆっくりとめくられる。ちよ先輩が、伺うようにひょこりと顔を覗かせた。
「体調、大丈夫?」
「え、あっ、……はい」
「真白ちゃんに聞いて、つい来ちゃった」
笑顔を浮かべた先輩に、落ちていた気分が一瞬で舞い上がる。
……心配して、来てくれたんだ……。
「もしかして、寝てた?起こしちゃったかな」
「いえっ、大丈夫です。……お昼休みが終わる頃には、戻ろうと思ってたので」
「そっか。頭はまだ痛い?」
仮病だとは言えず、私は首を振った。