ちよ先輩のてのひらの上。
「……そういうわけじゃ、ないですけど……」
「じゃあ、……いいんだ」
先輩はそう呟くと、もう一度私に触れた。
その感触に、私はぴく、と肩を揺らす。
先輩の手のひらが、頬を滑った。
長い指が髪の中に差し込まれ、耳の輪郭をなぞられる。
くすぐったさに思わず体を小さくすると、先輩は耳たぶを挟むように触れた。
くすっと笑いが漏れる。
「ここも熱いね」
からかうような声色に、私はきゅっと唇を噛んだ。
「……ちよ先輩……」
「うん?」
「先輩は……私に触りたいって、思ってるってことですか……?」
期待に膨らんだ鼓動が、耳の裏側で大きく響いている。
上目遣いに見ると、先輩は少し困ったように目元をほころばせた。
「……そうだね」
くい、と私の頭が引き寄せられる。
「思ってるよ」
咄嗟に目を閉じると、唇が重なった。
散々私を熱いと言った先輩の唇も、じんわりと熱を帯びていた。
「せんぱい……」
私はゆっくりと目を開け、先輩の瞳を見つめた。