ちよ先輩のてのひらの上。


……確かに、私はお兄ちゃんの妹で……ちよ先輩はお兄ちゃんの友達。

そのおかげで、先輩は私に優しくしてくれているのかもしれない。

だけど……。


私は、先輩の眼鏡をそっと奪い取った。

遠慮がちに顔を寄せて……初めて、自分からキスをした。

先輩に教えてもらったように、少し口を開いてから、もう一度唇を包み込む。


「もっと、教えて、ください……」


……なんとか、私を見てもらいたい。

どうしたら先輩は、私を見てくれる?


「先輩のぜんぶ、……知りたい……」


すがるように言うと、先輩が私のキスを受けながら、ふわりと唇の端を上げた。


「……それ、すごいセリフだね」


不意に、ちよ先輩が私の背中に手を回した。

ふたりの間の距離が埋まる。

先輩はさらに深く口付けながら、ゆっくりと私の体を倒した。

背中が、ベッドに優しく弾んだ。

その衝撃に、頭の芯がじんわりと痺れる。

熱っぽい瞳が、私をじっと見下ろした。

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