ちよ先輩のてのひらの上。


「……ひなちゃん。……もっと他に、俺に言いたいこと、ない?」

「え……」


頭が回らない。……なんだろう。

他に、言うこと……?


ぼんやりとした頭で必死に考えながら、見つめ返していると、


「……まいったな。まさかこれも、純粋な興味?」


先輩はため息交じりにそう言って、眉を寄せた。


「まあ、知りたいなら教えてあげるって言ったのは、俺だけど……」


……ちよ先輩……。
どうして、そんな顔……。

もしかして、先輩を知りたいっていうの……迷惑なのかな。


先輩の気持ちを頑張って読み取ろうとするけれど、わからない。


「……そんな困った顔、しないで。……いいよ。俺の全部、だっけ」


私が何も言えないでいるうちに、先輩がいつものように意地悪く微笑んだ。

……改めて確認されると、ものすごく恥ずかしい……。


「じゃあ、さ」


先輩は私の手をそっと掴んだ。

そして、自分の襟元へと持っていく。

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