ちよ先輩のてのひらの上。


「……ひなちゃんが、脱がせてよ」


……え……。
脱……?


何を言われたのか、頭が追いつかなかった。

先輩のネクタイに触れたまま、固まる。


「どうしたの。ほら……はやく」


囁くようにそう急かされて、やっと頭が状況を理解した。

かあっと顔に熱が集まる。


全部を教えるって……、そういう……!?

……ち、ちがっ……。私は、違う……っ。

そういう意味で、言ったわけじゃ……!


「あ、あの……っ」


あまりの混乱に、パクパクと口を動かすだけで、言葉がうまく出てこない。


どうやら、あらぬ誤解を生んでしまったみたいだ。

冷静に考えたら、ここはベッドの上だし、確かに……紛らわしかったかも……っ。


完全に自分に非があるわけだけど、どうやってこの誤解を解こう——と、そこまで考えて、はたと気づく。

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