ちよ先輩のてのひらの上。
「俺の気持ちを、そらは知ってたからさ。だいぶ警戒されてたし、……邪魔をしない代わりに、ひなちゃんの気持ちを一番に考えて、俺から強引に言い寄るようなことはしないって約束だった。……だから俺には、できるだけふたりでいられる時間が必要だったってわけ」
「まあ、半分約束を破るようなことは、しちゃったけど」なんて付け足すちよ先輩に、私は困惑の表情を浮かべる。
先輩が、ふわりと微笑んだ。
「……まだ、わからない?」
……わからないよ。ちゃんと、言ってくれないと……。
優しげな問いかけに、私は小さく頷いた。
「ひなちゃんの隣を独占できて、ひなちゃんのことを自分で守れる状況をつくりたかった。……俺にとって、これが、最善の方法だったんだ」
暖かい両手で頬を包まれて、上を向かされる。
至近距離にある整った顔に、胸が痛いくらいに音を立てていた。
「俺さ、……ここで初めて会った時から、ひなちゃんのことしか、見えてないんだよ」
先輩の言葉に、わけもわからず止まっていたはずの涙が溢れ出してくる。