ちよ先輩のてのひらの上。
「かーわい」
……もう……っ。なんだか、いつもよりさらにイジワルな気がするよ……っ。
私は、先輩が離れた一瞬の隙をついて、パッ、と口を両手で塞いだ。
「……ちょっと。どうして隠すの」
「っも、……おしまい、です」
「……やだ。まだ、ぜんぜん足りない」
ちよ先輩は、不満げに言ってから、
「……だってさ。今まで、すごくもどかしかったんだよ」
こつん、とおでこをくっつけてくる。
「俺、……結構頑張ってアピールしてたのに、あんまり伝わってなさそうだったし……」
先輩の瞳が、上目遣いに私を見た。
「恋なんてよくわかりません、って顔して、うまくかわされたと思ったら、……俺をドキドキさせるようなこと、ばっかり言ってくるし」
「……え……」
「かといって、期待してたら、……勝手に俺と比べて壁を作られるし」
「……」
「焦って、少しズルい手を使っちゃって……、けど、ひなちゃんはすんなり俺を受け入れちゃうし……。危機感のなさにびっくりしつつも、……我慢するの、かなりキツかった」