ちよ先輩のてのひらの上。


「かーわい」


……もう……っ。なんだか、いつもよりさらにイジワルな気がするよ……っ。

私は、先輩が離れた一瞬の隙をついて、パッ、と口を両手で塞いだ。


「……ちょっと。どうして隠すの」

「っも、……おしまい、です」

「……やだ。まだ、ぜんぜん足りない」


ちよ先輩は、不満げに言ってから、


「……だってさ。今まで、すごくもどかしかったんだよ」


こつん、とおでこをくっつけてくる。


「俺、……結構頑張ってアピールしてたのに、あんまり伝わってなさそうだったし……」


先輩の瞳が、上目遣いに私を見た。


「恋なんてよくわかりません、って顔して、うまくかわされたと思ったら、……俺をドキドキさせるようなこと、ばっかり言ってくるし」

「……え……」

「かといって、期待してたら、……勝手に俺と比べて壁を作られるし」

「……」

「焦って、少しズルい手を使っちゃって……、けど、ひなちゃんはすんなり俺を受け入れちゃうし……。危機感のなさにびっくりしつつも、……我慢するの、かなりキツかった」

< 154 / 225 >

この作品をシェア

pagetop