ちよ先輩のてのひらの上。
ズキン、ズキンと胸に走る痛み。
何も知らなかった時は、……誰かから悪意を向けられることを、怖いと思ったけれど。
自分のせいでお兄ちゃんに悪意が向けられてしまうことのほうが、よっぽど恐ろしいのだということを、——今、思い知った。
「……お兄ちゃんは、私にはもったいないくらいなんだから……」
なんでもできて、みんなの人気者で。……私なんかとは、全然違うんだ。
ずっと、恥ずかしかった。
大好きなお兄ちゃんの妹が、こんなウジウジしてばかりの自分で……、全然釣り合ってないって思ってた。
菜緒ちゃんとの出来事のときみたいに、自分のダメさにがっかりするのが、怖かった。
お兄ちゃんの妹で終わらず、結城ひなたとして見てもらえるには、どうすればいいんだろうって……。
だけど……。
『誰かと比べる必要なんてないんだよ。……俺は、目の前にいるひなちゃんのことが好きなんだからさ』
ちよ先輩に言われて、気づいたんだ。
小さい頃の思い出に捕らわれて、勝手にお兄ちゃんと比べてばかりで……。
一番私を見てあげられてなかったのは、私自身なんだって。
きっと、自分がどう見られるかを気にするばかりで、無意識のうちに自分を押さえ込んで、……すぐに諦めることが、癖になっちゃってたんだ。
貧乏くじだらけの人生なんだって、思い込んでた。
だけど、ちよ先輩に想いを伝えてみて……、諦めなければうまくいくこともあるんだって、わかったから。