ちよ先輩のてのひらの上。


「私は紺野くんに守られなくたって、大丈夫だよ……っ」


声を張り上げて、紺野くんを押しのけた。

けれど、震える両手はすぐに捕らえられて。後ろの壁へと押さえつけられてしまう。


「……やっ」


必死に顔を背けると、


「……叩くとか酷いな。こんなの全然結城さんらしくない」

「……ねえ、やだよ。お願いだから、やめて……」

「嫌なんて、今まで言ってこなかったじゃん。……やっぱ、千代崎の影響なのかな」

「離して……っ」

「いいじゃん、キスくらい。……あいつともしてたんだからさ」


イヤイヤと必死に首を振るけれど。

押さえつけられていた両手を頭の上で纏められ、もう片方の手で、顎を捕まれて強引に前を向かされる。

抵抗の意を込めて、涙の溜まった目で睨んだ。


「……そんなに怖い顔しないで。安心してよ。あんなやつより、よくしてあげるから」


低く囁かれて、私はぎゅっと目を閉じて全身を強張らせた。


——逃げられない。助けて。


『大丈夫だよ。ひなちゃんのことは、俺がちゃんと守ってあげる』


ちよ先輩……っ!

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