ちよ先輩のてのひらの上。
辿りついた答え
私の情けない顔が、レンズ越しのちよ先輩の瞳に見えた。
先輩は少し眉を下げて、
「これ、預かっててくれる?」
眼鏡を外して、私に握らせた。
そして、私を背中に隠すように、一歩前に出る。
「……紺野。俺、言ったよね。もしひなちゃんに手を出したら、今度は注意じゃ済まないって」
あくまでも穏やかな声色で、ちよ先輩が呼びかける。
けれど紺野くんから返ってきたのは、沈黙だった。
その表情は、ちょうどちよ先輩に隠れて、見えない。
未だに廊下に響き渡るサイレンが、私の心を余計に緊張させた。
「……邪魔だよ」
とうとう紺野くんが、ボソリと小さく呟いた気がした。
そのすぐ後に、カチチチ、と微かな音がする。
「お前、ほんと邪魔なんだよ!」
ダッ、と廊下を踏み込む音と、ちよ先輩が私の体を押しやったのは、ほぼ同時だった。
不意に加えられた力に抗えず、床に尻餅をつく。
低くなった視界に、ちよ先輩に向かって駆け出した紺野くんの手元で、何かがキラリと光ったのが見えた。
鋭い閃光が、ちよ先輩に勢いよく振りかかる。
その正体を、頭が漠然と理解して——。