ちよ先輩のてのひらの上。
「……ひなたっ!!」
どこからか、お兄ちゃんが叫んだ。
それを合図に、背後からバタバタと複数人の足音が近づいて来た。
振り返ると、まず、お兄ちゃんが見えた。
私と目が合うと、顔を歪ませて。
「よかった……っ」
全速力で駆け寄って来て、その勢いのまま、がばっと抱きしめられる。
痛いくらいの力に、喉が詰まった。
く、苦しい……。
思わず声を上げそうになったけど、……頭に添えられた手が微かに震えていることに気づいて、やめた。
ぐにゃりと視界がぼやけた。
続いて、先生たちが3人ほど、駆けつけてきた。
「千代崎くん!?どうしたの!」
「いったい、なにがあったんだ」
紺野くんをとり押さえているちよ先輩に、先生たちが驚いた声を上げた。
落ちていたカッターと、涙を流しながらへたり込む私。そして、ちよ先輩と紺野くん。
先生たちの視線が、慌ただしくいったりきたりをする。
私は人の気配にとうとう安心して、お兄ちゃんの腕の中で目を閉じると、指の先まで、一気に脱力してしまった。