ちよ先輩のてのひらの上。
鏡の前に立って、念入りに全身をチェックする。
隠れていた膝が少し覗くくらいにスカートを調節し、曲がっていた胸元のリボンを直した。
最後に髪の毛に指を通して整えて、時計を見る。針はちょうど、30分を指していた。
バッグを肩にかけ、——私はやっと、自分の部屋を飛び出した。
階段を駆け下りる私を見上げ、お母さんが呆れたような顔を見せた。
「……もう。お兄ちゃん、先に行っちゃったわよ」
「だって……。髪の毛、なかなか直らなくて」
適当な言い訳をしながら、急いで靴を履く。
「じゃあ、行ってきますっ」
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
お母さんの声を背中に受け、飛び出す勢いでドアを開けた。