ちよ先輩のてのひらの上。
「……ちよせんぱい?」
「……俺の名前、教えたらさ。……呼んでくれるの?」
耳元に落とされた問いかけに、私は、コクコクと頷いた。
嬉しそうな吐息に肌を撫でられて、くすぐったい。
「俺の、名前はね」
耳元で、大きな鼓動が響いている。
それが自分のものなのか、ちよ先輩のものなのか、わからなかった。
「——蒼だよ。チヨザキ、アオイ」
先輩の声が、私の鼓膜を震わせた。
それと同時に、体の内側で堪えきれなかった熱い想いが、——私の目から、ぽろりとこぼれ落ちていった。